カワスイ飼育担当クルーの生きものトリビア<新たな魅力AtoZ>
隠れた暴れん坊将軍ことジムナーカス 編

カワスイオープニングからいる私にようやく執筆の機会が回ってきたと思ったら、なんと最後の「Z」!!
そんな最後を飾るのは、カワスイの隠れた暴れん坊将軍こと「ジムナーカス」! ジムナーカスもカワスイオープン当初からアフリカエリアで展示しており、餌をあげる時は素直に寄ってくるが、いまいちお客様からの注目度は低い…。今回は長く観察してきた私の視点からこの「ジムナーカス」という生きものを深堀していくぞ!
       

鰭(ヒレ)は3つしかない

ジムナーカスはカワスイでも数多く展示しているアロワナの仲間で、ジムナーカス科に属する現存する生きものの中では唯一の種だ。ざっくりこの種類を観察した時に、他の魚類と大きく異なるのは鰭(ヒレ)ではないだろうか。一般的に魚には5種7つの鰭があり、それぞれ泳ぐ際の推進力や方向転換、ブレーキ、体のバランスを保つといった目的がある。 ところがジムナーカスは、2つの胸鰭と大きな1つの背鰭しか持っていないのだ。この大きな背びれを床屋の店前においてあるサインポールのように、一定のリズム感でゆらゆら動かし推進力を生みだす。そして驚くべきことにこの背鰭、バック(後退)することもできるのである。入り組んだ流木の中をこの巨体が自由に動き回る様子は、自然の中でもこうした器用な動きが狩りや身を守るためにうまく機能していたのでは…と想像を掻き立てられる。
たなびくように揺れ動く背鰭。前進と後退を使い分け、器用な動きを可能にしている

性格はややキレやすい

ジムナーカスは実は他の水族館ではあまり目にする機会が少ない。その1つの理由として他の生きものと同じ水槽で飼育すること(「混泳」という)が難しい魚と言われているためではないだろうか。「魚」と一言にいっても自然の中での暮らしは様々で、生き残るために他者を追い払い、餌や住み家を確実に確保しようとする種類も少なくない。
ジムナーカスも基本的には1匹で飼育することが推奨される種であり、時には同居する他の魚を噛みちぎったなど、カワスイでも誰とだったら同じ水槽で飼育できるのか大変頭を悩ませた。またジムナーカスは噛む力が強いと言われており、水槽の水温をあげるための金属製のヒーターを噛み砕いた、といううわさもある。結局この4年間、カワスイではポリプテルスという頑丈な鱗をもつ種と同じ水槽で、あまり仲良くはなさそうだが、うまくやっている(たぶん)。          
顔のパーツだけを見るならば、小さく整った目、ハムっとした分厚い唇、 そして口角が上がったようにも見え可愛い表情をしている。 この姿からは魚の体や、ましてヒーターを噛み砕くとは思えないが、 体長1.5m以上にもなるこの種にとって、このあごの力は自然の中を 生き抜くための非常に大きな武器になるのだろう。    

タイプは水・電気?

 カワスイには800Vの電圧を操るデンキウナギをはじめ、デンキナマズなど電気を出す魚がいる。こういった種類に直接触ろうものなら、我々飼育員も敵と認識されて感電してしまう。彼らはこの強い電気で敵を撃退し、餌となる生きものを感電させて捕食するのだ。 そして今回紹介しているジムナーカスも電気を生み出す魚類の1種だ。デンキナマズのような強力な電機ではなく、微弱な電気で周囲の障害物や生きものを探知するために使っている。また水槽外で発生する静電気にも反応できるらしく、もしかすると私たちヒトのことも視覚だけでなく、電気的に感知している可能性もあるのでは…と私は想像を膨らませている。      
 カ身体の尾側に発電器官があり、電場を展開している。周囲に障害物や生きものがいるとこの電場に乱れが生まれ、それを感知している。      

カワスイ 川崎水族館10階 アフリカゾーンにて展示中

 ジムナーカスのように微弱な電気を発して周囲の様子を探索したり、たなびく様な鰭で前後へ器用な泳ぎを行ったりする魚は他にも存在する。その中には祖先が全く異なり、交わることなく似たような進化を遂げた(収斂進化)生きものもおり、ジムナーカスが獲得したこれらの特徴がいかに自然界で強力な武器であるかを物語っている。 生きものって知れば知るほど面白い…!      
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カワスイ 川崎水族館10階 アフリカゾーンにて展示中なので探してみるべし!

〒210-0024 神奈川県川崎市川崎区日進町1-11 ルフロン 10F 電話番号  044-222-3207
営業時間  10:00-20:00(最終入館:19:00)